病院に宗教者がいるということ

ゲンの言ノ葉

〜比較を超えた世界で〜

『にんげんはねぇ 人から点数をつけられるために この世に生まれてきたのではないんだよ にんげんがさき 点数が後(みつを)』

 私たちが人と接する時に“本能的に”得意とすることがあります。それは“比べること”。自分と誰かを比べたり、周りから比べられたり…その繰り返しで今日まで生きてこられたことでしょう。

 ふと気付くと他人からの評価に縛られ、自分がどう思われるかが気になり、一体私は何がしたいのか?と自分を見失うことがあるのが人間です。

「人と比べられなければ、どれだけ楽に生きられたか…・・」という声を聞いたこともあります。

 比較をすることで、「良い人生だった」と言う人と「こんなはずではなかった」と言う人を“同時に” 生み出します。勝つ人がいれば、負ける人がいる様に・・・

1番難儀するのは、わかっていても、“比較して生きること”から抜け出せないことです。

 人と比較されない世界が仮にあるとすれば、そこではどんな人生であっても、“かけがえのない歩みだった” と称賛されるでしょう。

宗教者とお話しをしている間だけでも、そんな世界にいるような心地になっていただければ、というのが私の願いです。

 患者さんのお部屋に伺うと、色々な話を聞かせていただきます。病気、仕事、家族、趣味、信仰、価値観、宗教家だからこそ話したい内容・・・

私側から話題の限定はしないので、会話・筆談・ジェスチャーを通して、思い行くままに言葉を紡がれます。気付けば1時間が経過することもあります。

 病院に入院すると、多くの方は人と関わる機会が減り、孤独を感じる時間が増えます。

その孤独を全て埋めることは到底叶いませんが、少しだけでも・・・という思いで日々“比べることのない”コミュニケーションを賜っております。

合掌

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